症候学・診断学

症候学

Primary Survey(ABCDアプローチ)

A(Airway:気道は開通しているか?)

発声があるか?
ある 正常
なし 気道の異常か意識障害
吸気時に異常気道音があるか?
なし 正常
あり(いびき) 主に意識障害により舌根が沈下して生じる→下顎挙上で改善
あり(吸気性喘鳴) ①喉頭浮腫:急性喉頭蓋炎で咽頭痛、嗄声、流涎あり(座位にする)
①喉頭浮腫:アナフィラキシーショックで全身掻痒感、膨疹、粘膜腫脹
②異物:窒息で頸部を手でおさえるチョークサイン→吸引・異物除去
②異物:誤嚥で口腔内ガラガラ音、口腔内液体の貯留→吸引
③気管外からの圧迫:甲状腺腫瘍、血腫など
吸気時に胸郭が上がっているか?
上がっている 正常
上がっていない 胸腔内圧が陰圧で息ができず①〜③となる
①陥没呼吸 鎖骨上窩が陥没していれば、
②喉頭隆起下方牽引 のどぼとけの下方牽引があれば、胸腔内圧が陰圧で息ができていない
③シーソー呼吸 吸気時に胸が下がり・腹部が上がる(モニター呼吸数は出る点に注意)
気道に異常がある場合
頭部後屈顎先挙上 +バックバルブマスク(頚椎損傷には禁忌
※外傷や頚椎可動制限がある場合は下顎挙上+バックバルブマスク

B(Breathing:換気や呼吸仕事量に無理はないか?)

呼吸数
普段より低下 意識レベル低下の有無を確認→あれば呼吸中枢のある脳幹機能低下疑い
普段より上昇 頻呼吸の以下鑑別を行う
①組織低酸素(嫌気的解糖系亢進により乳酸値上昇
・低酸素血症、Hb低下やHb機能異常→血ガスで確認
・循環動態不安定→MAP65mmHg未満
・動脈閉塞や狭窄
・ミトコンドリア機能異常:例えば高サイトカイン血症
②高CO2血症
・代謝亢進によるCO2産生上昇
・肺胞低換気によるCO2排泄低下
③代謝性アシドーシスの代償
・AG非開大性:尿細管性や下痢によりHCO3が喪失
・AG開大性:糖尿病性やアルコール性ケトアシドーシス、腎不全など
④呼吸中枢の直接的興奮
胸郭運動の異常の有無
呼吸様式の異常 吸気時の努力呼吸:胸鎖乳突筋や僧帽筋が緊張している
呼気時の努力呼吸:腹直筋が緊張している
呼吸に異常がある場合
①酸素投与 SpO2 96%以上が目標、ただしCOPDの場合は88〜92%
②原因検索 胸部X線、エコー、CT
③人工呼吸器管理

C(Circulation:心臓の機能は?末梢までO2届いているか?)

循環の悪そうな見た目はあるか?
交感神経亢進症状 冷や汗、蒼白、末梢性チアノーゼ、網状皮斑
頸静脈怒張はあるか?
怒張あり 心原性か閉塞性ショックの可能性あり
脈は触れるか?
触知不良 橈骨A触知不良:sBP80以下
末梢は冷たいか?
末梢冷感あり 爪床を5秒間圧迫し解除後、CRT3秒以上の延長があれば
下腿浮腫あり 心不全の可能性あり
循環異常がある場合
①末梢静脈路確保
②中心静脈路確保 末梢が難しい場合は内頸Vなどで確保
③骨髄内投与 静脈路確保が難しい場合
④気管内投与 骨髄内投与が難しい場合

※CRT:capillary-refilling time(毛細血管再充満時間:爪床の赤みが回復するまでの時間)

D(Dysfunction of CNS:いつも通りの意識レベルか?)

【GCS(Glasgow Coma Scale)】意識レベルと意識内容を別々に評価

3つの機能の合計点(3~15点)で評価し、GCS10(E3V4M3)のように記載する。

開眼機能(eye opening) 自然に開眼 or 自発的に20秒以上開眼できる E4
呼びかけると開眼(=JCS20) E3
痛みに対し開眼(=JCS30) E2
開眼しない E1
言語機能(verbal response) 見当識あり(場所、日付、目の前の人の職業) V5
見当識障害あり V4
対話にならない V3
ア〜など発声=Voiceのみ(Vピースで2! V2
発語なし V1
運動機能(motor response) 命令通りにできる(離握手可能)(OKサイン M6
※1番良い部分を点数化する 痛みに対し払いのける(離握手はできない M5
例えば四肢が動かなくても 痛みに対し手足をひっこめる(逃避行動) M4
顔面が動けばM6 病的屈曲(除皮質硬直)(3の形になる M3
伸展反応(除脳硬直)(2の形になる M2
反応なし M1

M4:例えばBabinski徴候のように足底や手掌ひっかく時の反応で見る

【姿勢の異常】

除皮質硬直 上肢は屈曲し、下肢は伸展・内転・内旋する。 大脳半球の広範な障害。 臨床的にはGCSのM3に相当する。
除脳硬直 上下肢とも伸展する。 中脳の障害。 臨床的にはGCSのM2に相当する。

【JCS(Japan Coma Scale)】JCSは、意識レベルと意識内容を同時に評価

JCSⅠ-0=意識清明、JCS1桁、2桁、3桁でだいたいの意識レベルを判断

刺激しないでも開眼 1 見当識障害はないが、今ひとつはっきりしない
2 見当識障害あり(時・場所・他者を認識ができない)
3 自分の名前や生年月日が言えない(記憶障害)
刺激を与えると開眼 10 普通の呼びかけで容易に開眼する
20 大きな声または体を揺すって開眼する、離握手可能
30 痛み刺激+呼びかけを繰り返して開眼する
刺激を与えても開眼しない 100 痛み刺激に対して、払いのける動作をする
200 痛み刺激で少し手足を動かす、顔をしかめる
300 痛み刺激に対して無反応

●意識障害がある場合

瞳孔左右差を確認
瞳孔左右差あり 2mm以下は縮瞳6mm以上は散瞳(瞳孔径2.5~4mmで左右対称が正常)

Vital sign

バイタルサインの異常は絶対値よりも普段との変化が重要である。

①血圧(BP) 基準値:100〜130/60〜85mmHg
  ・肘を心臓と同じ高さにし、マンシェットを肘下2cmまでで巻く
  ・末梢に行くほど血管内径が細くなり血管抵抗が上昇するため血圧は高くなるため、下肢で測定すると上肢より血圧が10%高い
②脈拍(HR) 基準値:60~99/分(bpm):100回以上は頻脈、60回未満は徐脈
  ・左右差と整/不整も確認
  ・スポーツ選手だとHR50以下も多い
  体温0.5〜1℃上昇→脈拍10回/分増加(比較的徐脈を除く)
  ・120回以上は拡張期短縮により心不全となる
脈拍低下+血圧低下 ①迷走神経反射、②高K血症、③急性心筋梗塞、④徐脈性不整脈、⑤副腎不全、⑥甲状腺機能低下症、⑦脊髄ショック、⑧薬剤性
脈拍低下+血圧上昇 クッシング現象を除外
脈拍上昇+血圧低下 ショックの鑑別(交感神経系の亢進が代償できずショック)
脈拍上昇+血圧上昇 交感神経系の亢進理由を検索
③呼吸数(RR) 基準値:14~20/分:25回以上は頻呼吸、12回未満は徐呼吸
  ・心電図モニターの電極の動きからカウントしてくれる
③SpO2
基準値:96%以上:90%未満で呼吸不全(90〜95%は低め)
  マンシェットの巻いていない方の腕で測定する
  ・SpO2 90%=PaO2 60Torr
  Hb値が低下している場合は運搬酸素量も低下するため、SpO2が95%以上でも低酸素状態となる。その結果、せん妄など生じる可能性がある。
SpO2測定不可 ①末梢循環不全(脱水・低体温など)→マッサージ、加温が必要
②マニキュア、爪の汚れ → 爪の汚れを取って測定
③CO中毒、メトヘモグロビン血症など異常Hb→動脈血ガス測定
④体温(BT) 基準値:36~37℃(通常、腋窩体温)、小児は成人より概ね0.5℃高い
  ・麻痺側は循環が悪く低いため、健側で測定する
  直腸温>口腔温・鼓膜温(-0.5度)>腋窩温(-1.0度)の順に高い
体温低下 発熱できないほどの重症の可能性、低体温の原疾患を検索
体温上昇 発熱か高体温を判断、比較的徐脈を除外

脈の触れる場所

触知部位 詳細
①浅側頭動脈 耳の前
②総頸動脈 触知不良:推定sBPは60mmHg以下
③腋窩動脈 脇の下 上腕骨に沿って触る
④上腕動脈 肘の内側
⑤橈骨動脈 手首掌側の親指側 触知不良:推定sBPは80mmHg以下
⑥尺骨動脈 手首掌側の小指側
⑦大腿動脈 太ももの付け根 触知不良:推定sBPは70mmHg以下
⑧膝窩動脈 膝の裏
⑨後脛骨動脈 内果の後方
⑩足背動脈 背側の中央付近

Secondary Survey

ABC安定後、全身を系統的に評価

Step1 問診、身体診察、検査結果より、プロブレムリストを列挙する。
Step2 バイタルに影響・新規発症・治療可能の3つを満たす数が多いほど優先順位が高い。
Step3 3Cの鑑別をあげ、同じ鑑別診断で説明できるプロブレムをグループ化する。
3C:Common、Curable、Critical
Step4 各グループごとに必要な治療を開始する。
Step5 自然に改善しない、さらなる評価が必要な場合、社会的に帰宅困難な場合は入院

問診のAORTA

As usual ADL:普段の状態はどんななのか?最後に元気だったのはいつか?
Onset OPQRST
Response 解釈:体調不良に対する解釈モデル
対処方法:どのように行なっていたか?
Time course 経過:体調不良の時間変化、どのような医療システムを通って、最終的にどんな理由でER受診に至ったのか?
AMPLE Allergy:アレルギー歴
Medication:使用薬
Past history&Pregnancy:既往歴、妊娠
Last meal:最後の食事時間と内容
Events:受傷機転、病歴

症候別

頭痛

症候学の頭痛を参照

頸部痛

症候学の頸部痛を参照

咽頭痛

症候学の咽頭痛を参照

胸痛

症候学の胸痛を参照

腹痛

症候学の腹痛を参照

腰背部痛

症候学の腰背部痛を参照

関節痛・関節腫脹

症候学の関節痛を参照

意識障害

症候学の意識障害を参照

けいれん

脳神経総論(けいれん、てんかん)を参照

失神

症候学の失神を参照

発熱

症候学の発熱を参照

全身倦怠感

症候学の全身倦怠感を参照

リンパ節腫脹

症候学のリンパ節腫脹を参照

浮腫

症候学の浮腫を参照

体重変化

症候学の体重減少・増加を参照

悪心・嘔吐

症候学の悪心・嘔吐を参照

吐血・下血

症候学の吐血・下血を参照

便秘

症候学の便秘を参照

下痢

症候学の下痢を参照

腹水・腹部膨隆

症候学の腹水・腹部膨隆を参照

黄疸

症候学の黄疸を参照

脱水

腎泌尿器の脱水を参照

呼吸・循環に関連した症候

メモ
頻脈徐脈 循環器の不整脈を参照
呼吸困難 症候学のSpO2低下を参照
酸素飽和度低下 症候学のSpO2低下を参照
喘鳴(wheezes) 症候学の喘鳴を参照
気道異物 救急医学の気道異物を参照
咳嗽・痰 症候学の咳・痰を参照
血痰・喀血 症候学の血痰・喀血を参照
嗄声 症候学の嗄声を参照

神経・精神に関連した症候

メモ
めまい・難聴 症候学のめまい・難聴を参照
脱力・筋力低下・しびれ 神経診察を参照
歩行障害 症候学の歩行障害を参照
嚥下困難・嚥下障害 症候学の嚥下障害を参照
認知機能障害
抑うつ・不安
不眠 精神科の睡眠障害を参照
せん妄 精神科のせん妄を参照

皮膚に関連した症状

発疹 症候学の発疹を参照
薬疹 皮膚科の薬疹を参照

婦人科の症候

視力障害・視野狭窄 症候学の眼の異常を参照
月経異常・不正性器出血 症候学の月経異常を参照
外陰部潰瘍 症候学の外陰部潰瘍を参照
性交痛 症候学の性交痛を参照

尿に関する症候

血尿・蛋白尿 症候学の血尿・蛋白尿を参照
排尿障害 症候学の多飲多尿・頻尿・乏尿・尿失禁を参照
尿閉 症候学の尿閉を参照

Common disease

高血圧 循環器各論の血圧異常を参照
糖尿病 内分泌代謝の血糖異常を参照
糖尿病網膜症 眼科の糖尿病網膜症を参照
脂質異常症 内分泌代謝の脂質異常症を参照
高尿酸血症・痛風 内分泌代謝の結晶誘発性関節炎を参照
貧血 症候学の血球数異常を参照
感冒 症候学の感冒を参照
緑内障 眼科の緑内障を参照
喘息・COPD 呼吸器の閉塞性肺疾患を参照

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